2011年7月で地上波テレビ放送はアナログ放送を終了し、デジタルハイビジョン放送に移行します。家庭のテレビやビデオもこの流れにのってハイビジョンの時代になりつつあります。家電量販店ではすでにアナログテレビ放送と同じ規格であるスタンダード画質のVHSデッキ、miniDVカメラなどは隅っこに追いやられて、地デジ対応のハイビジョンテレビやブルーレイレコーダー、ハイビジョンビデオカメラが売場を占領しています。
しかしこれまで撮りためたVHSやHi8、miniDVなどのビデオテープやアナログテレビ放送が属する「スタンダード」と「ハイビジョン」の違いって?また「アナログビデオ」と「デジタルビデオ」の違いって何なんでしょう?
以下の文章では各規格の概要を大まかにお伝えするにあたり、厳密な専門理論とは多少異なる表現、解釈をしている箇所がありますのでご了承ください。
■スタンダード(SDTV/SD画質)とハイビジョン(HDTV/HD画質)
| スタンダード(SDTV/SD画質) |
ハイビジョン(HDTV/HD画質) |
 |
 |
[画面サイズ]640×480ピクセル
[総ピクセル]307,200ピクセル |
[画面サイズ]1920×1080ピクセル
[総ピクセル]2,073,600ピクセル |
| VHS |
水平解像度240本 |
フルHD(1080i) |
1920×1080/1440×1080ピクセル |
| S-VHS |
水平解像度400本 |
HD(720p) |
1280×720/960×720ピクセル |
| Hi8 |
水平解像度440本 |
|
| DVD-Video |
720×480ピクセル |
|
| miniDV(4:3) |
720×480ピクセル |
|
| miniDV(16:9) |
853×480ピクセル |
|
アナログ映像は本(線)、デジタル映像はピクセルで表記します。
「スタンダード」とは、ハイビジョンが登場する以前から標準的に使われていた画質レベルの映像のこと。「ハイビジョン」との併用状態から、従来の画質を標準=「スタンダード」とし、その2倍程度の走査線を持つ高精細度の画質を「ハイビジョン」と呼ぶようになったのです。
映画のスクリーンで「4:3」の画面を「スタンダードサイズ」と呼びますが、これはワイドスクリーン(ビスタサイズやシネスコサイズなど)が登場するまで標準的に使われたサイズであったことと似ていますし、「ハイビジョン」という規格を作るにあたっては映画のワイド化した規格をならったものと考えられますね。
走査線(縦方向の線数)では480:1080=2.25倍の表現力になりましたが、画質を線数で表したのはアナログ時代のお話。映像(ビデオ)もデジタル時代になってピクセル数で表すようになりましたので、さらに精密に比較すれば307,200:2,073,600=6.75倍の表現力ということになります。
家電量販店のテレビ売場などでアナログテレビ+DVDとハイビジョンテレビ+ブルーレイの比較展示を見比べてみると、スタンダードテレビではつぶれたりぼやけていた映画のエンドクレジットなどの小さな文字や繊細な毛髪や樹木の葉っぱの1枚1枚まで輪郭がはっきりクッキリするだけでなく、明るさや色合いも段違いに変わっていることが分かります(テレビモニターの性能向上にもよりますが…)。
「スタンダード(SD画質)」の録画メディアでは、上表でまとめたようにそれぞれのテープやDVD等の録画メディアによって解像度が異なりますが、「ハイビジョン(HD画質)」の録画メディアではHDVが「1440×1080ピクセル」と言える以外は、ブルーレイもAVCHDも録画するコンテンツや保存先メディア、録画可能時間の都合等に合わせて可変的に対応できるようになっているみたいです。
ただアナログ放送が終わってデジタルハイビジョン放送に切り替わるからと言って「スタンダード」=「アナログ」「4:3」、「ハイビジョン」=「デジタル」「16:9」という風に理解するのは少し間違っています。テレビ放送規格の移行がたまたまそういう枠組みと一致していたにすぎません。
「アナログ」と「デジタル」の違いは録画メディア(ビデオ)の違いで見た方が分かりやすいかも知れませんね。
■アナログ映像(ビデオ)とデジタル映像(ビデオ)
簡単に言い分けると映像をアナログ信号で放送したり、記録している映像が「アナログ放送」であり、従来の「アナログビデオ」です。同様にデジタル信号で放送したり、記録する映像が「デジタル放送」であり「デジタルビデオ」ですね。
録画メディア(ビデオ)の違いで見れば、[VHSビデオ系]のVHS、S-VHS、VHS-C、[8ミリビデオ系]の8ミリビデオやHi8など主に経年劣化しやすいテープメディアで記録されていたもの、画質が低い上にダビングするとさらに画質が劣化してしまうものが「アナログビデオ」、miniDVやDVDなど画質がテレビ放送並みにクッキリ鮮明になって、ダビングしても画質が劣化しないものが「デジタルビデオ」です(但しデジタルビデオでもデータを圧縮したり、レートを下げる等すると画質は劣化することがあります)。
画面サイズ(比率)で見ると「アナログ」映像は主に「4:3」でしたが、かつては「16:9」のアナログハイビジョン放送もありました。同様に「デジタル」映像は「ハイビジョン」のような「16:9」だけではありません。DVDやminiDVなどの録画メディアでは従来の「4:3」の映像も記録していますね。このように画面サイズ(比率)だけでは「アナログ」「デジタル」の違いを表すものとは言えませんが、映画と同様にビデオの世界でも「4:3」の画面サイズを「スタンダードサイズ」と呼ぶ一方、「16:9」の画面サイズを「ハイビジョンサイズ」と呼ぶこともあります。ここが「アナログ」=「4:3」、「デジタル」=「16:9」という誤認を生んでしまう原因のようです。
これから映像(ビデオ)の世界が「デジタル」に移行することは確実です。となるとハイビジョン放送の普及で市民に一般化するであろう「ハイビジョンサイズ(16:9)」に一本化されてしまうのでしょうか。「スタンダードサイズ(4:3)」は、映画のサイズ規格の中で存在し続けているように映像(ビデオ)のサイズ規格としても姿を消すことはないと思います。これまで文化的な財産として放送界にとどまらず、一般市民の皆さんの家庭で「アナログ」「4:3」の映像(ビデオ)は広く蓄積されています。「ハイビジョン画質」の一般化で切り捨てられるのではなく、きちんとデジタル化して残され続けなければなりません。
すでに一般の生活から姿を消してしまったベータビデオや8ミリビデオ、Hi8とは別に、「アナログビデオ」として根強く生き残り続けた[VHSビデオ系]のビデオもついに録画メディアとして時代の波に淘汰されてしまう運命であることは家電メーカーの生産動向から明白と言えます。現実にアナログ放送が視聴できなくなって地デジ対応のハイビジョンテレビやブルーレイレコーダーに買い替えると、VHSで撮りためているビデオは、そのままでは見られなくなってしまうのです。
こうした運命にある「アナログ&スタンダード画質」の映像を継承するため「デジタルビデオ」の録画メディアにあるDVDは、時代の波に押しやるのではなくブルーレイと共存して残されるべきですし、残されなければなりません(次世代ビデオディスクとして登場したブルーレイには「DVDと共存化できるフォーマットであること」という開発条件が課せられていることを家電メーカーは忘れてはなりません)。
でなければビデオが初めて家庭に入った「VHS、S-VHS、VHS-C」「ベータ」やパスポートサイズハンディーカムやビューカムなどビデオカメラの小型化、簡易化で爆発的なビデオブームを呼んだ「8ミリビデオ、Hi8」等のビデオテープに多くの市民が記録した膨大な「アナログビデオ」資産を人類は失ってしまうことにもなりかねません。
最近、家電メーカーの宣伝文句には、これらの「スタンダード画質」のビデオをブルーレイに録画すれば、ブルーレイディスク1枚に25時間分も収録できてベンリ!なんてことを謳うものもありますが、決して「ハイビジョン画質」に向上するわけではなく、やみくもにデータ量を増やすデメリットをBDディスクの飛躍的な大容量で得られる恩恵でゴマカシているだけにも思えます。万が一25時間分をひとまとめにした後でブルーレイディスクが読み取れなくなったら…CD、DVDと同じディスクサイズに25〜50GBの大容量データを収めるデメリットとして、まだまだ録画メディアとして傷に対する弱さを指摘する声もあるのですから。
今のところ「スタンダード画質」のビデオはDVDで残す。それこそが現時点で適正かつ効率的で安全な保存方法ではないかと思います。デジタル時代への移行と時を同じくして、10年前に主流だった「8ミリビデオ・Hi8」、20年前に主流だった「VHS・S-VHS・VHS-C」は共に経年劣化しやすいテープメディアの宿命として、製品寿命を迎えつつあります。だからこそ、@my-dvdはこれからも皆様の想い出がいっぱい詰まった「VHS・S-VHS・VHS-C」や「8ミリビデオ・Hi8」などのアナログビデオのデジタル化はDVDにして保存することをお薦めいたします。
■ハイビジョンはハイビジョンでも…
一概にハイビジョンと言ってもBSデジタルハイビジョン放送やブルーレイディスク、主なAVCHDビデオは「1920×1080ピクセル」でデータ圧縮に「AVC(MPEG-4)」方式、地上デジタル放送やHDVビデオは「1440×1080ピクセル」でデータ圧縮に「MPEG-2」方式を採用しています(ピクセル数の少ない後者は「4:3」データの[アナモフィック(米)、またはスクイーズ(日)と呼ばれる]ワイドスクリーン表示のように横方向に引き延ばすのではなく元々が横長の長方形画素で形成されています)。「フルハイビジョン(フルHD、フルスペックハイビジョン)」と呼ばれるのは「1080i」とも呼ばれるこの2つのフォーマット。しかし、ハイビジョンにはさらに「720p」と呼ばれるフォーマットもあります。
データ量としては「1080i」の方が大きいのですが早い動きが多い映像では画質が落ちるため、「720p」の方が適当と言われています。数字の後の[ p ] は順次走査(プログレッシブ)方式、[ i ] は飛び越し走査(インターレス)方式のことで、走査線に映像をどう映し出すかの違いが影響するようです。またインターネットでハイビジョン映像を配信する時にも「720p」の方が適当と言われています。データ転送の都合やコンピュータが順次走査方式(p)で、飛び越し走査方式(i)の映像に合っていないためです。シロウト目にはホントにややこしいのですが「ハイビジョン」の中にも用途に応じてなのか、開発メーカーの足の引っ張り合いなのか、フォーマットの違いが多くて困ってしまいます。
■HD画質って、ハードディスクに録画したビデオのこと?
ハイビジョンのことを「HD」と表記しますが、Hi-VisionならHVでは?なんて思う人もいるかも知れません。実は「ハイビジョン」という名称はNHKの登録商標で「High Definition television/HDTV=高精細度テレビジョン放送」と呼ばれる国際放送規格の日本における愛称なのです。なものですから略称は「HD」の方を用いているものだから、またまたややこしい要素が増えて来ます。
「HD」と言えば「ハードディスク」と連想する人も少なくないはず。
実際に@my-dvdにご注文いただくお客様の中にも「ハードディスクのビデオカメラに録画したデータをDVDに焼いてもDVDプレーヤーで見られないので、見られるようにして欲しい」と依頼を受けて、DVDで送られて来たビデオデータを確認すると「AVCHD」方式で録画されたハイビジョンだったということがありました。カメラの側面に大きく「HD」と書いてあるのを「ハードディスク」と誤解していたようです。「HD」とは「ハイビジョン」であることを説明すると「ハイビジョンで撮れてもまだハイビジョンテレビもブルーレイもないので困った。普通にDVDで見られるビデオが撮れればいいんだが…」とおっしゃるので、今後はそのカメラで「SD画質」を撮るモードに切り替えればよいことをお知らせするとひと安心されていました(もちろん送られたAVCHDも普通に見られるDVDにダビングし直してお届け)。
一方では「ハイビジョンカメラで録画したビデオをDVDプレーヤーで見られるようにダビングして欲しい」と依頼を受けて、届いたビデオデータを確認するとSD画質だったということもあります。お客様は「ハードディスク」タイプのビデオカメラを使っていて、カメラに大きく「HDD」と書いてあったから「ハイビジョン」と間違っていたようです。少なくともビデオカメラに記された名称で「HD」は「ハイビジョン」、「HDD」は「ハードディスク」を表します。
「ハイビジョン」の美しい画質で撮影できるビデオカメラがお手軽価格で手に入るようになったのはうれしいことですが、似通った表記があったり、さまざまな規格や保存メディアを使ったビデオカメラが乱立状態になってしまい、多くのユーザーが戸惑っていることをメーカーはどう考えているのでしょう。「ハイビジョン」素材のご注文を受ける時はお客様にこういう誤解がないかを確認するのに腐心したりします。
[この文章は2009年11月現在のビデオ事情を基に@my-dvdがまとめたものです]
|